第10回 視覚表現の可能性
開講日: 2017年12月5日
講師: 加藤文俊
10回目となる今回は、11/14の第8回に行われた中間発表に対するレビューが行われた。更に最終発表に向け、発表の詳細と課題設定がなされた。また今回の記事では中間発表で目立った発表をした二つの班のプロダクトについても紹介する。
加藤文俊 教授
始めに、加藤先生から発表内容の傾向が紹介され、それを踏まえた全体の分類分けについて解説がされた。まずよく見られた傾向として、デジタルさとアナログさを取り上げたものがあり、その中で読書体験にフォーカスした班と、デジタルにアナログの良さを取り入れる、という対立なものと見られがちな両者を融合する取り組みを試みた班がいたことが紹介された。他には電子書籍ではあまり得られない出版物の所有感に注目した班では、共有体験・所有欲求・コミュニティという3つのフォーカスが行われていたことが示された。また紙媒体の劣化を良いものと捉え、年季が入ること、熟成することのノスタルジーさを強調する方向性も見られたことを挙げた。
加藤先生によるメモ
このように中間発表を総括した上で、最終発表に向けて、内容を3つのカテゴリに分類して、カテゴリを班で選んで最終発表を行う課題設定がなされた。コンセプトを「社会仮説:社会的意味・インパクト」「技術:実現可能性・運⽤」「かたち:シチュエーションの具体化」の3つに定義、各カテゴリ3班程度ずつで、最終案を競うことになる。
続いて吉井順一氏と和田准教授からも中間発表の講評が行われた。まず吉井氏からは全体のテーマ設定として、比較的に安易でサプライズを持った意外性のある視点が少なかったことに言及し、現在の社会状況にたいして刺激を与えるアイデアの必要性について解説がされた。また個々人や複数人で完結してしまうアイデアが多く、大勢を巻き込むタイプのアイデアが少なかったことも指摘し、事前の理由や目的がなくとも、大勢を巻き込んでおくことによるメリットについて解説がなされた。
和田先生からはまず、アメリカ滞在を通して見えてきた、日本とアメリカの出版を取り巻く環境の違いとその理由について紹介がされ、アメリカの本の価格の高さから日本の本・出版物需要の高さについて示された。また、論文の査読における、電子文書と出版物の扱いの違いについて紹介され、アメリカでは査読の際には電子文書は認められず、ちゃんと刊行されていることが求められるという事例が紹介された。そこから、中間発表から見えてきた、和田先生の年代と学生の年代の文字を読むという行為の受け止め方と実践の仕方の違いについて感想が紹介された。また、本の価格によって保証される品質の差についても先生の受け止め方が示された。
吉井順一 氏
和田龍磨 准教授
ここからは中間発表で印象的なプロダクトを発表した二つの班について紹介する。
まず一つ目は、電車内での読みやすさと携行のしやすさに特化して、本を再定義したプロダクトを作ってきた班で、下の写真のように、小説がページごとに小さく畳まれていて、片手でページを送りやすくまた持ち運びがしやすくしたものだ。
二つ目は、食べられる出版物をテーマに、詩を焼き入れたクッキーを作ってきた班で、学内設備のレーザーカッターを使って、詩を書き入れたそうだ。今回は詩とクッキーにそこまでの関係性はなかったのだが、文章の内容とそれを書き入れる食べ物に関連性が生まれると、より魅力を増してくるプロダクトだった。