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第12回 出版の国際化

開講日: 2017年12月19日

​講師: 塚本進

12回目の今回は、株式会社KADOKAWAの塚本進 氏をお迎えし、出版の国際化をテーマに、コンテンツビジネスの海外戦略について講義が行われた。

まずは現在のコンテンツ市場の規模について、経済産業省の指標を用いて、紹介が行われた。2014年の指標によると、2020年の市場予測と比べた成長率は、国内が2.8%に留まるのに対し、世界全体が3.9%の成長が見込まれ、日本市場の先行き不安が明らかにされた。また、主に中国市場の成長に起因して、アジアパシフィック地域の市場規模の成長が7.4%と非常に高い数字で見込まれており、KADOKAWAも中国市場へのコンテンツの輸出に力を入れている事例が紹介された。

次に、アメリカハリウッドのコンテンツビジネスの手法と、日本の手法の違いについて取り上げた。ハリウッドが全世界をマーケットとして捉え、現地に支社を置き、世界各地でのマーケティングとプロモーションまで、ハリウッドの配給会社が責任を持って一括管理してパッケージ化しているのに対し、日本の場合は配給会社がマーケットとして捉えているのは日本市場だけで、海外にコンテンツを輸出する際には放映やプロモーションは現地の別会社が担当し、その会社に放映のライセンスを売る、というビジネスモデルの違いがあった。ハリウッドの手法はもちろん多くの投資を必要としリスクを伴うものだが、一方でヒットを記録すればするほど利益を得ることができるものだ。ハリウッドはマーケットを世界規模に拡げ、中国など重要なマーケットで確実にヒットが見込めるよう、映画の製作段階からマーケティングの要素を組み込むことで、実際にヒットを飛ばしている。一方で日本式のビジネスモデルだと、現地でのヒットの有無に関わらず、始めに受け取るライセンス料しか受け取ることはできず、アジアを中心に大きなセールスを記録した、「君の名は」などの事例においても日本での興行収入が大半を占めた事実が示された。

​更に北米・中国・日本の3つの地域で、2011年から5年間の映画における興行収入のグラフが示され、すでに飽和を迎え成長が見込めない日本市場に比べて、日本の約4倍の規模を誇り今後も著しい成長が見込める中国市場の可能性が示された。その上で、KADOKAWAの海外展開の事例に話題は移り、現地に支社を置いて現地でのマーケティングを重視する、ハリウッド式で海外展開を進めている事例が紹介された。現在KADOKAWAではアジア地域を重点的に現地支社を設立し、映像・コンテンツの配給だけでなく、現地でのゲーム化やイベントを実施することで、現地コミュニティを盛り上げ収益に繋げている。また海外拠点を設けることで、現地発のオリジナルIPが日本に入ってくるという逆の事例も置きており、コンテンツの交流が加速している事実が明らかにされた。

また日本のIPを目当てに、日本に旅行に来る外国人旅行客のインバウンド需要についても言及があり、アニメ・漫画といったコンテンツをどうやって観光に繋げていくのか、KADOKAWAの施策が紹介されて授業を締めくくった。

​コンテンツビジネスの最前線を知る方の講義で、学生達にとっても非常に貴重な回になるとともに、最終発表に向け視野を拡げることができた講義だった。

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