第2回 出版の歴史
開講日: 2017年10月3日
講師:吉井順一
2回目となる今回は、吉井順一氏から現在までの出版の歴史、出版という言葉の意味する範囲について、講義を行った。時代によって、記録媒体がどう移り変わっていったのか。また出版のどの部分を担うかで、扱う物が「商品」「作品」「情報」と切り替わるのか。これを順を追って読み解いていく。
前半は記録媒体の歴史が解説された。人類史における最古の記録媒体の一つである石に始まり、パピルスや羊皮紙、紙、フロッピーディスク、DVDと移り変わり、現在ではクラウドに記録をする時代が訪れている。この変遷は単なる記録方法の変更だけの問題ではない。石版や紙の経年劣化による消失、デジタル媒体においては、例えばフロッピーディスクに対応したPCが無くなっているように、旧世代のデジタル媒体を読み取ることができなくなってしまうのだ。文化のアーカイブ(記録・保存)の観点でこれは重要な問題で、旧世代に記録されたデータを全て最新のフォーマットに移し替えることが必要になる。デジタル媒体の下位互換不足は、現在も解消されていない大きな問題の一つだ。電子書籍が大きく普及しつつある中で、このような視点を持つことがとても重要であるというメッセージだった。
また、このような記録媒体・メディアの移り変わりによって、ビジネスモデルも変化を続けてきた。その中で出版業界の基本的なビジネスモデルについて紹介がされた。
吉井順一 氏
後半は、デジタルの時代の到来で出版のビジネスモデルがどう崩れていくか解説があった。特に学生が興味を持って聞いていたのが、メディアビジネスの捉え方についての話で、MITメディア・ラボの創設者であるネグロポンテ氏の言葉を例に、メディアビジネスは時間の取り合いである、というものだ。日本人が一日にメディアに触れる時間、4時間強の内、9割はPC・スマホ・テレビなどのディスプレイに時間を取られており、紙媒体やラジオは残りの1割を取り合っている、というのが現状で、出版社が本来やってこなければいけなかった取り組みとはなんだったのか、という問いかけがなされた。また世界の文化における日本文化・日本語の特異な点が取り上げられ、これが現在はCool Japanとして持ち上げられているが、これがいつまで続き、グローバルから外れた文化として淘汰されているのかという危機感が語れたと共に、Cool Japanコンテンツが生き残っていくために必要な変化について、生徒の意見を踏まえた議論が行われた。